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介護士コラム~体験談~

看取り介護後の体験談。寂しいけど心温まったお別れの場面の体験

施設における看取り介護は、施設形態によって対応のしかたが異なります。しかし、介護業界全般として「入所型の生活施設において、できるだけ看取り介護をする」という流れになってきています。これは介護保険事業に大きな影響を及ぼす厚生労働省の方向性の1つでもあります。

今回は、看取り介護そのものよりも、看取り介護後の体験談として、お別れの場での出来事をご紹介します。この記事を読んでくださった方が「看取り介護っていいね」と思っていただければ・・・という思いで体験談をご紹介します。

「ご利用者様の価値の1つは、お別れの場に居合わせた人」

看取り介護後の体験談に入る前に、上記の言葉をご紹介します。

この言葉は、私が介護士としてまだ若かった○○年前に、当時のベテラン介護福祉士の先輩から教わった言葉です。今でも私が大切にしている言葉の1つであり、看取り介護に関わる介護士にはぜひご紹介しておきたい言葉です。

ご利用者様の人生背景も実に様々であることが、介護の仕事をしていると見えてくることの1つです。もちろん守秘義務があるので他言はしないにしても、ご利用者様の基本情報として生い立ちなどは必ず記載されている情報の1つです。

例えばお金に恵まれた方、恵まれなかった方、人生の途中まではお金持ちだったけど、やがて生活保護受給者として最期を迎える方、ご家族に恵まれた方、恵まれなかった方等々いろんな人生があることに気づかされます。

上記のベテラン介護福祉士の言葉に戻ります。
このベテラン介護福祉士は、すでに何件もの看取りを経験されてきた方でした。看取り慣れしているという表現は不適切かもしれませんが、看取りの場でも決して慌てることがない先輩でした。

そのベテラン介護福祉士が言っていたのは「いろんな事情があって人生の晩年に施設に入所されるご利用者様に対し、残りの人生をどう支えていくかが介護士の仕事だ」「そのご利用者様の人生にきちんと関わり、最期が来たら感謝をこめてきちんとお別れする」ということを良く言っていました。「だから通夜や葬儀、それ以外の時間でもいいから、時間が許す介護士は、ご家族様の許可を得れたらできるだけ最期のお別れをしてきなさい」と、そのベテラン介護福祉士から教わってきました。

生活保護で身寄りもほとんどないS様とのお別れ

施設で看取り介護をさせていただいたS様は、今までの人生の様々な事情から連絡先は長女様のみ、その長女様も「母には複雑な感情があり、許せる母ではないので、連絡は最小限にしてください」といった長女様でした。長女様以外の親族無しで、生活保護受給者として施設で最期を迎えられました。

このS様、過去の人生はともかく、施設では人気者のおばあちゃんでした。施設では他のご利用者様にも職員にも愛されていました。

直葬の場、数多くの介護士が集まった

S様は生活保護受給者だったので、ご葬儀にかけることのできる費用は生活保護で定められた金額のみ、一般的なお通夜とご葬儀は無しで直葬でした。斎場の火葬搬入場所の前で20~30分程度のお別れ、S様の親族は長女様のみという寂しいお別れの場でした。

しかし、施設で人気者だったS様のお別れの場に、多くの介護士が集まりました。休みの者、夜勤明けの者、当日夜勤入りにもかかわらず睡眠時間を削ってきた者などです。介護士以外の施設職員も集まり介護士含めて約20名が直葬前の場に集まったのです。皆、S様に声をかけながらお花やS様が生前愛用していた物を棺に入れました。棺の中寂しさを感じさせないような状態になりました。

長女様からの言葉に温まるものを感じた

S様のご遺体が火葬場所に搬入された後、長女様から意外な、でも温まる言葉をいただきました。

長女様「母のことは今でも許していない、今までも連絡は最小限にしてくださいとお願いしてきました。でもお別れの場に、介護士の方々がこんなに多く母のために集まってきていただいて、晩年の母がいかに充実した生活を送っていたかがわかりました。○○ホーム(私達の施設名)に入所できて良かったと、心からそう思うことができました。ありがとうございました。」

私達は「長女様なりに複雑な思いを抱きながら、今までS様の連絡先を引き受けていただいていた」と思っていたので「直葬の場も長女様は淡々と対応される」かと思っていたのです。

その長女様から、最後にこのような言葉をいただき、列席した介護士の誰もが心温まるものと、介護士としての経験をプラスさせたのでした。

まとめ

今回は看取り介護の体験談をご紹介しました。
ご利用者様の人生、看取りのあり方、最期の後の対応など、どのような対応が正解だとは一概には言えませんが、この体験談を読んでくださった介護士の方の看取り介護に対する励みになれば幸いです。「看取り介護は価値あるもの」と感じていただければ幸いです。

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