HOME > すべての記事 > 介護士コラム~体験談~ > 看取りたくなる境地へ。手がかかるご利用者様ほど看取りたい!

介護士コラム~体験談~

看取りたくなる境地へ。手がかかるご利用者様ほど看取りたい!

看取り介護と聞くと「こわい」「不安」と思われる介護士の方はまだまだ多いのではないでしょうか。
特に経験の浅い介護士ほど、看取り介護に対する不安は強くなるのではないでしょうか。

しかし、今回ご紹介する内容は、ベテラン介護士の実際の発言と実体験として「看取ってあげたくなるご利用者様がいる」「でも看取ることができず、最期のお顔を見ることができずにやりきれなくなった」というような体験談です。看取り介護に対して不安を抱く介護士の方の気持ちが良い意味で軽くなるような、看取り介護にトライしてみたくなる体験談です。

「認知症で手のかかるK様」の存在

私の関わっている入所施設に、K様(90代半ば、女性、要介護4)というご利用者様がいました。
晩年は座位は保つことができても、立ち上がることは困難な状態でした。でも認知症があったため、K様はご自分では歩くことができると思われていたかのように、介護士の目の届かないところで立ち上がってはふらつき転倒するという介護事故が繰り返し発生してました。

表現は不適切であることを先にお詫びいたしますが、K様は「手のかかるご利用者様」であり、介護士にとっては、やっかいな「目の離せないご利用者様」だったのです。かといってイスに座らせっぱなしにさせて抑制帯でもしてしまったら、身体拘束に該当してしまう(介護施設では法的に禁止されている)ので、介護士チームはK様の見守りと介護方法と事故再発防止策に苦労を重ねてきました。

しかし、1人のベテラン介護福祉士が次のような発言をしました。
「手のかかるご利用者様ほど、後から介護士として関わったことの思い出や、経験値として重ねる物事が深くなるんだよ。だからがんばって介護しよう。」とのことでした。

衰えていくK様

そんなベテラン介護福祉士の言葉に励まされながら、介護チームはK様に関わっていきました。しかし90代半ばのK様は徐々に食事摂取量、水分摂取量が落ちていきました。

施設ケアマネや生活相談員は、万が一に備えてK様のご家族様と密に連絡を取り、終末期に備えた意向確認書も常に最新の状態に、ご家族様に署名捺印をもらいながら日々が過ぎていきました。

(この施設では、嘱託医の先生が看取りと判断した場合には「看取り介護同意書」をご家族様に署名捺印していただくのですが、看取り期でないご利用者様の場合は「終末期の意向確認書」という書面で、急変時対応に対するご家族様の意向を確認しています。)

しかし、施設の嘱託医の先生の見立てでは「まだ看取りの時期ではない」とのこと。介護チームも「食事や水分摂取量は落ちてきているものの、全く食べれない飲めない状態ではなかった」ため、看取りという意識は誰も持っていませんでした。

望まなかった救急搬送

しかし、最期の場面は急変として突然やってきました。

ある日の朝食前(夜勤明け勤務時間)、K様の呼吸状態に変化が生じました。偶然にも看護師が早めに出勤していたため、介護士から看護師に引き継ぎ、看護師から嘱託医の先生を経由して救急車搬送でK様は搬送先の病院で他界されました。

なぜ施設で看取ることができなかったか?誰の責任でもないのですが、嘱託医の先生が看取り期ではないと判断していたので、結果的には急病急変の可能性で救急車搬送せざるをえない状況だったのです。

急変後の急死ということで、警察も施設に状況確認に来ました。ご遺体は搬送先の病院から、念の為に警察署に搬送された後、ご家族様のもとへ行きました(もちろん事件性は無く、施設に責任は無いことは証明されました。

ただ、悔やまれるのは、ご家族様は看取りを希望していたが、結果的に病院搬送になってしまったこと(これに対してご家族様からクレームはありませんでした)、そして介護チームとして看取ることができなかったことです。

これを象徴するような次のような発言が、ベテラン介護福祉士からあったのです。

「手がかかったK様だったからこそ、最期はがんばってきた介護チームで看取ってあげたかった」
「病院搬送→警察署へのご遺体搬送で、最期のお顔を見ることができなかった」「最期の場面での救急搬送は結果的にはしかたがなかったけど、ご家族も私達も望んでなかったよね。」そして、ベテラン介護福祉士から涙が・・・その涙に介護チームの他の介護士も感極まって涙してしまいました。

それから少し日が経ち、介護チームの気持ちも落ち着いてきてK様の思い出話もできるようになったのですが、多くの介護士から「もっとしてあげたかったことがあった」「看取ってあげたかった」という発言が聞かれたのです。

想いが深まれば看取りたくなる、介護を極めていくと、介護士はそんな気持ちになるものだと実感したK様の事例でした。

まとめ

看取り介護は、特に経験の浅い介護士にとっては不安が強くなる場面ではあります。しかしチームで介護していると、今回の主軸のベテラン介護福祉士のようなリーダー的存在の介護士がいたり、看護師もいたりするので、不安は分散され、またみんなで経験値を積んでいくことができます。

今回ご紹介した内容が、看取り介護に対して不安に思っている介護士が、看取りにトライしたくなるような体験談として参考になれば幸いです。

掲載中の転職サイト一覧

介護士コラム~体験談~関連記事