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介護士コラム~体験談~

看取り介護実体験。若い介護士の涙と、関係者からの励みとなる言葉

入所型の介護施設は、社会的役割として「看取り介護」への対応が求められる時代となりました。

しかし、若い介護士や経験の浅い介護士にとって、看取り介護はどうしても不安が先行しがちです。
その反面、看取り介護は直面しないと積むことができない貴重な経験が多くあります。

今回ご紹介する内容は、看取りの瞬間に直面した若い介護士と、リーダークラスのベテラン介護福祉士の言葉、後日ご家族様からいただいた言葉などを、実体験としてご紹介します。
看取り介護に対する不安が解消され、看取り介護はよいものだと思っていただける方が増えることを願っての記事になります。

看取り介護の経験がないという不安

私が関わっている入所型の介護施設では、看取り介護を行っています。
介護士の中には若い介護士や経験の浅い介護士もいれば、その反対に何十人も看取り介護をしてきたリーダークラスのベテラン介護福祉士も存在します。

リーダークラスのベテラン介護福祉士は、何十人もの看取り介護を経験しているので、良い意味であわてることなく対応できます。
反対に、若い介護士や経験の浅い介護士は、看取り介護が未経験の者もいます(この施設で初めて看取りを経験することになるのです)。そのような介護士のほとんどは、不安が先行しています。

リーダークラスのベテラン介護福祉士から「あわてることはない」「呼吸停止や心停止しても、看取り対応であることを医師が認めていて、かつご家族様の同意も得ているから、119番通報して救急車を呼ぶ必要はない」と言葉で説明を受けても、若い介護士や経験の浅い介護士は「不安です」と正直に返答をします。

実際に、私も介護士として経験の浅い頃、看取りに対してとにかく不安が先行していました。
人間が息を引き取るとはどういうことなのか、呼吸や心臓が止まるということはどういうことなのかを目の前で見るような実体験がないと、不安はぬぐえません。

だからこそ、矛盾するようですが、看取り介護という経験は、看取り介護と直面しないことにはそのイメージがつかめないとも言えるのです。

看取りの瞬間に直面した、若い介護士の涙

私の関わっている施設で、先日90代半ばの女性のご利用者様をお看取りいたしました。
呼吸停止・心停止の瞬間というのは、なぜか明け方に多いのですが、このときも午前5時台に呼吸状態が変化し、6時台に呼吸が停止したというお看取りでした。

このときの夜勤者は(時間帯としては夜勤明けと呼ばれる時間帯)20代で、今年度、介護福祉士を受験する経験3年半の若い介護士でした。

お看取りの瞬間は、いつかは必ずやってきます。
だから誰が悪いということは絶対ないのですが、その若い介護士は「いざ、看取りに直面すると、どうしてよいかわからず、オンコール当番の看護師に電話するのが精一杯だった」と、夜勤明けの勤務終了時間の後、介護職員室で目を真っ赤にしながら泣いていました。

ベテラン介護福祉士から「選ばれた介護士」という励まし

涙が止まらない若い介護士に、リーダークラスのベテラン介護福祉士(何十人も看取った経験をもっている)が、こんな言葉をかけていました。

「ご利用者様は、旅立つ日(看取られる日)をちゃんと選んでいるように思う」

「(若い介護士に対して)あなたのもとなら安心できると思われたからこそ、あなたの夜勤明けを選んで旅立ったと思う」

「ご利用者様は介護士のこともちゃんと見ている、安心できる優しい介護士のときに旅立つご利用者様が多い」

「だから、あなたはご利用者様に選ばれた介護士として、自信を持ちなさい」

このような言葉をかけていたのです。

ご家族様から、胸があつくなる言葉をいただく

看取りの日は涙がとまらなかった若い介護士も、休みをはさんで次の出勤日には気持ちを切り替えて「笑顔でがんばります」と出勤してきました。

看取りの雰囲気が落ち着いた頃の後日、ご家族様が来所されました。
そのときご家族様から、看取りに直面した若い介護士に直接こんなことを言ってくださりました。

「うちの母は、○○さん(看取りに直面した若い介護士)のことが好きだったので、○○さんが夜勤明けの日で本当に良かったです。母の最期の顔が、穏やかに眠っているような顔だったので、きっと安心して旅立つことができたんだと思います。○○さん、本当にありがとうございました」

この言葉を聞いた若い介護士は、看取りの日とはまた違った意味で感極まっていましたが、そのご家族様に対して、次のようなことを返事をしていました。

「そのようなお言葉をいただいてありがたいです。私(若い介護士)はお母様の看取りをとおして、多くの事を学ばせていただきました。これからも介護をがんばっていこうという気持ちが強くなりました。こちらこそありがとうございました。」

まとめ

看取り介護は、若い介護士や経験の浅い介護士にとって不安が先行しますが、看取り介護を経験することは大きな経験値となり、介護士として大きく成長できるときでもあります。

今回ご紹介した若い介護士の実体験、ベテラン介護福祉士の言葉、ご家族様から若い介護士に対していただいた言葉などをとおして、「看取り介護っていいものだな」と思ってくださる介護士が増えれば幸いです。

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