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介護士のお仕事

誤嚥窒息の発見が遅れがちになる理由と、食事見守りの重要性

介護士の大切な仕事の1つが「食事介助」です。
食事介助と聞くと「重度でご自分では食事を口に運ぶことができないご利用者様に対して、スプーンなどで介護士が直接口に運ぶ介助」をイメージされる方が多いと思いますが、食事動作が自立しているご利用者様の見守りも、大切な食事介助の一部だと理解することが重要です。

介護士の間でも、例えば「ご利用様の食事時間に見守りだけの介護士はラクだ」という意見がありますが、はたして本当にそうなのでしょうか?

今回は、食事動作が自立のご利用者様の食事場面における見守りの重要性について触れてみたいと思います。

実際にあった、オカラで誤嚥窒息による他界

まずは、食事動作が自立のご利用者様に対して、見守り不足による誤嚥窒息の事例をご紹介します。
この出来事は、実際に私がデイサービスやショートステイで関わっていたご利用者様でしたが、そのご利用者様が、自宅で食事をしているときに発生した実話です。

そのご利用者様は男性で、脳梗塞による後遺症で半身麻痺がありました。
しかし、麻痺の程度は比較的軽く、日常生活の多くは車いすを自走してある程度の日常生活動作は介助無しでも生活できる方でした。

ご自宅内でも、室内用車いすを活用され、食事においても目の前に運んでもらえればスプーンとフォークでご自分で食べることができる(介助不要)ご利用者様でした。

そのご利用者様の訃報は、まさしくある日突然で、担当ケアマネージャーがご家族様に原因を確認したところ、食事前にご利用者様ご本人が何だかイライラしており、オカラをほおばっていたとのこと。

気になったご家族様が「少しゆっくり食べたら」と声をかけたが、返答が無かったので様子を見にいったら、ほおばっていたオカラが口の中にたくさんあり(喉の奥で詰まっており)息ができない様子、急いで119番通報し救急車要請したものの、間に合わなかったとのことでした。

ここでお伝えしておきたいのは「食事動作が自立しているご利用者様でも、誤嚥窒息の可能性がある」ということと、「人間は喉に物が詰まると声が出ない」という点です。

余談ですが、この記事を読んでいる方も、試しにご飯やパンを飲みこみながら声を出してみようと試みてください。
普通の方は飲みこみながら声を出すことはできません(つまり人間の身体の構造として無理があるのです)。

見守りの重要性、食事動作が自立していても見守る必要はある

前述したとおり、人間は食べ物などが喉につまると声が出なくなります。
つまり「喉に物が詰まったから、助けてください」と訴えることが機能的にできなくなるのです。

むせる方は、まだ介護士も気づきますし、むせる方は「むせやすい咀嚼・嚥下状態になっている」ことが多いので、介護士側も気にかけているものです。

繰り返しにはなりますが、最も突然やってくる誤嚥窒息は、普段の食事動作が自立であり、介助不要のご利用者様です。
特にほおばったり、かけこむように召し上がられる方は、見守りの強化が必要です。

下を向くか、うずくまって声がでない→119番通報はためらわない

万が一、食事動作が自立のご利用者様が誤嚥窒息した場合、最初は下を向くか、うずくまって声がでない状態になります。
介護士はこのような場面を見たら、直ちに周りの介護士や看護師などに知らせます。

決して1人で情報を抱えてはいけません。多くの職員に知らせることで、生命が助かる確率は高くなります。
仮に何事もなかった、見守りしていた介護士の勘違いで、誤嚥窒息してなかった、となればそれはそれで笑い話にしてしまえばよいのです。

そして、早めに119番通報し救急車要請をすることも重要です。
これも、救急車が到着するまでの間に、詰まった物が取れて呼吸が回復した等であれば、笑い話にして救急隊に謝罪すればよいのです(ただ、別の側面から『窒息していた間、脳に酸素が行き届いていない』という可能性が高まりますので、そのような点で救急車搬送してもらった方が良い場合が多いことも、介護士は頭に入れておいてください)。

本当に物が詰まって取り除くことができない、となったら放置時間が長くなる程、生命を失うリスクは急速に高まります。

空気を通すことを考える

とにかく喉に食べ物がつまった場合は「気道の確保」と言われます。

「気道の確保」ととっさに言われて、介護士側がパニックっているようなら、ご利用者様の口の中で詰まっている食べ物を指でかきだし、顔を横に向けて(上向きにしておくと、口腔内の残り物が再び喉をふさいでしまう可能性がある)、ご利用者様が自発呼吸ができていれば、とりあえずは最低限の対処はできたということになります。

まとめ

食事動作が自立しているご利用者様の食事見守りは、どうしてもおろそかになりがちですし、「まさか誤嚥窒息することなどないであろう」という先入観が働きます。
それ故に、いざ自立度の高いご利用者様が誤嚥窒息した場合、介護士は本当に慌てます。

その前ぶれである、「ご利用者様が下を向いてうずくまっている」「下を向いて声がでない」このような場面をいち早く見つけることが初期対応で重要であり、生命を助けるうえでも非常に大切になってきます。

今回の記事を読んだ方が、食事の見守りを軽い仕事だと思わずに、実は思いもよらない危険が存在しているということを認識していただき、「たかが見守り」「されど見守り」という気持ちで、ご利用者様の食事場面における見守りを大切にしていただければ幸いです。

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