認知症で入浴拒否ご利用者様の対応～介護士レベルアップ術

介護士としてスキルアップしていくために避けて通ることができない事の１つに「認知症のご利用者様への対応」があります。
その中でも特に苦労するのが「認知症のご利用者様が入浴拒否したときに、どう対応するか」という点ではないでしょうか？

今回は、認知症で入浴拒否するご利用者様への対応方法のコツについてご紹介します。
介護士のレベルアップ術として、ぜひ参考にしていただきたい内容です。

入浴拒否する理由がある

介護士が仕事をするうえで悩む事、困る事に「認知症のご利用者様が入浴を拒否して入っていただけない」「言葉かけをして誘う（誘導する）が、浴室の出入口くらいまでしかお連れすることができない」といった事があります。

この「認知症のご利用者様が入浴拒否をする」という事は、よくある事ではあり、珍しい事ではありません。
しかし、実際に介助にあたる（誘導を担当する）担当介護士としては「縄をつけて引っぱっていくことはできないので、どうにもできずに困る」事になってしまいます。

このとき介護士としてスキルアップしていくために必要なのは「入浴を拒否する理由が必ずある」という視点と「基本は無理強いしない」という視点が大切になってきます。

「入浴を拒否する理由」としては、認知症のご利用者様は、例えば「この先どうされるのかがわからなくて不安」だったり「自分に何か危害を加えられてしまうのではという不安」があったりすることが考えられます。

また「無理強い」してしまうと、認知症のご利用者様は「無理やり何かされた」という印象だけが強く残ってしまう可能性があり、次の入浴の機会からますます拒否が強くなるということも考えられます。

介護士としての心のゆとり「生命の危機に直面するわけではない」

認知症のご利用者様の入浴拒否が何日も続くと、担当する介護士としてはあせりとプレッシャーから「何としてでも入浴させたい」と、良くも悪くも無理強いをしてしまいそうになります。

実際「清潔保持が気になる」「全身のボディチェック（身体の見た目上の異常がないかどうか、皮膚トラブルがないかどうか等の確認）ができていない」等、介護士であれば気になるところではあるので、良い意味で言えば「ご利用者様のためを思って、無理をしてでも入浴させたくなる」と考えます。
これはあたり前の事であるとも言えます。

しかしそのときに介護士としてスキルアップしていくための視点としては「入浴できなくても生命の危機に直面するわけではない」という、心のゆとりをもつことです。これは担当介護士１人だけでなく、チームで介護する場合は、介護士チーム全体でそのように考えることが重要です。

良い意味で、入浴と違う点に関心をもたせる

認知症で入浴拒否をしているご利用者様に対して「何日もお風呂に入っていないから、今日こそはお風呂に入りましょう」と言っても、答えはほぼ「入りません」か、何らかの理由で断る（拒否をする）結果になります。
そもそもまともにお声かけ、お誘い（誘導）して入っていただけるのであれば入浴拒否にはならないわけです。

そのような場面では、あえて入浴とは関係ないような場面や物事に関心をもってもらいながら、入浴の方向へお誘いしていくというのも、介護士としてスキルアップしていくための視点としては大切になります。

認知症で入浴拒否をしているご利用者様をお誘いした私の実体験をいくつかご紹介します。

認知症であっても将棋が好きな男性のご利用者様に対しては「あちらが将棋大会の開場です」と実際に将棋セットを見せながら脱衣室までお誘いし「お風呂に入った方が、将棋大会の参加条件になります」とお伝えし、入浴していただいた体験があります。

女性で認知症のご利用者様に対しては「今日はお化粧の日です」とお伝えし、脱衣室までお誘いし、「お化粧もしますが、全身に美容と健康のためのクリームを塗ります」とお伝えし、入浴していただいた体験があります。

認知症の男性のご利用者様に対して、表現は悪く価値観も分かれるところではありますが「今日はキレイな姉ちゃんがたくさんいますよ」とお声かけして入浴していただいたこともあります（参考にするかしないかは読者の方におまかせします）。

お伝えしたいのは「あえて入浴と違う点に関心をもたせる」そして「そこから入浴へお誘いしていく」という事です。
介護士としてはある意味「あの手、この手、次はどの手で誘ってみるか・・・」等考えるのも、考え方によっては仕事として楽しい（？）と思えるのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたか？
認知症で入浴拒否をされるご利用者様への対応は難しい点もありますが、考え方によっては「介護士の知恵と腕の見せ所」とも言えます。入浴できない日が続くと気になる点も多々発生しますが「今すぐ生命の危機に直面するわけではない」程度のゆとりをもって対応することをおすすめします。

今回ご紹介した内容が、介護士としてスキルアップしていきたい方のお役に立てれば幸いです。