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介護士のお仕事

歩く認知症ご利用者様と介護士のより良い関係作りコツについて

介護士の仕事において、今の時代避けられない事の1つが「認知症ご利用者様との関わり」です。
認知症ご利用者様の多くは「身体機能には問題なく歩行できるが、理解力(認知機能)が低下しており、言語理解が難しい」という方が多いです。

そのような現状において「認知症のご利用者様にはあまり歩かずに、介護士の目の届くところにいてほしい」と思いながら仕事をしている介護士が多いのも事実です(本来よろしいことではありません)。
そのような介護士の方は、認知症介護の視点を少し変えてみる必要があります。

今回は「歩かれる認知症ご利用者様と介護士のより良い見守り関係作り」をテーマに、認知症ご利用者様との関係性作りのヒントに触れてみたいと思います。

認知症ご利用者様が歩くのには理由や目的がある

認知症ご利用者様が自由に歩くことに対して、ひと昔前の介護業界は「徘徊」という言葉を使っていました。
今でもその名残りはありますが、認知症ご利用者様の尊厳を考えたときに、決してよい響きの言葉ではありません。

また「徘徊」という言葉には「理由もなく歩き回る」というイメージが強いですが、認知症ご利用者様が歩かれる際、多くのご利用者様は何らかの理由や目的があって歩いています。

ここで介護士が理解をしておかなければいけないのは、先にも述べたように「認知症ご利用者様は何らかの理由や目的があり歩いている」が「認知機能の低下により場面が理解できていなかったり、歩いている理由や目的を適切な言葉で表現できない」という点です。

認知症ご利用者様は理由なくさまよっているわけではない、ということを理解する必要があります。

つい言ってしまう「待っていてください」はNG

とはいっても、認知症介護の現実がキレイ事だけではすまないことは、働く側の立場からみれば理解できる点でもあります。
実際に少ない介護士で多くのご利用者様を介護するという構図は、どの介護施設もかわりません。

介護士の中には「認知症ご利用者様には、できることなら歩かずにジッとしていてほしい」と思い、つい「待っていてください」「座っていてください」と声をかけてしまう介護士がいますが、これはNGです。

「待っていてください」「座っていてください」という声かけがNGなのは、主に2つの理由からです。
1つは「言葉による身体拘束に該当する可能性がある」という点(この身体拘束の考え方の詳細は、本記事では省きます)、もう1つは「結果的に、認知症ご利用者様の精神の不安定をあおり、身体機能の低下をまねく」という点です。

今回の記事では、後者の「認知症ご利用者様の精神の不安定と身体機能の低下」に着眼して、この後の内容をより掘り下げた視点で見ていきたいと思います。

誰もが「やりたいこと」を止められると「怒りや不安」になる

認知症に限らず、私達の普段の生活において、次に記載するような事を想像してみてください。

「私には今やりたいことや目的があって行動している」のに他人に「それを止めてくれ」と止められた。そのようなときに、皆さんならどのような気分になりますか?
良い気分になる方はほとんどいません。認知症のご利用者様も全く同じです。

先にも述べましたが、認知症のご利用者様が歩かれる場合においては、ほとんどの場合ご利用者様なりの理由や目的があります。
それを他人(ここでは介護士のことをさします)に「ジッとしていてください」「座っていてください」と止められるのです。

しかも、認知機能が低下しているのが認知症ご利用者様のご病気です。
「止められた」ということだけが、悪い印象として残り、なぜ止められたまではご理解できない場合が多いのです。

したがって、認知症ご利用者様は「止められた」から「怒りや不安」をまねき、ますます「怒りや不安解消のために歩きだそうとする」、これを介護士が再び止める⇒認知症ご利用者様の怒りや不安をますますあおる、という悪循環に陥ってしまうのです。

そして介護士だけが「あのご利用者様の介護はタイヘン」という悪しき感情を抱くようになってしまうのです。

ご家族様にリスク説明をしたうえで、歩いていただく

認知症ご利用者様が歩かれている場合、生命の危険や、他ご利用者様に危害が及ばないようであれば、基本的には歩いていただき、介護士はそれを見守るという介護スタンスに徹底した方が、ご利用者様の身体機能の低下を防ぎ、精神の安定を図ることができます。
また、介護士だけでキリキリとした感情を抱くこともなくなります。

「転倒したらどうしよう」「玄関の外に出ていき、行方不明になったらどうしよう」という不安は介護士には絶えずつきまといます。
ケアマネージャー等を通じて、ご家族様に転倒リスクを十分に説明する、また屋外など最後の砦のセキュリティーだけは対策を講じておくなどすると、認知症ご利用者様への関わり(認知症介護)において「ジッとしていて」とか「座っていて」という感情を抱くことも少なくなります。

言い方を変えると、その方が認知症ご利用者様の介護において、介護士もストレスが少なくなると言えるのです。

まとめ

認知症ご利用者様の介護において、ご利用者様の歩くという行動を止めるという視点での介護は、ご利用者様の心身機能の低下や不安定さをまねきます。
また、介護士にとっても「なぜ介護士だけが、あのご利用者様の介護で疲れなければいけないのか」といったマイナス感情やストレスにも結びつきます。

ご家族様に理解を得たうえで、適度に歩いていただき、許せる範囲で行動を制限しないことが、認知症ご利用者様と介護士のより良い関係を作ります。

今回触れた内容が、認知症介護に悩んでいる介護士にとっての参考になれば幸いです。

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