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介護士コラム~体験談~

介護で目指す自立とはどんなものなのか?

最近の介護施設では「自立支援」というものが重要視されてきています。
自立支援とはその人の持っている能力(できる事)をできるだけ持続させるためにサポートをする事です。
自立支援を目指して、介護士は何に気をつけ、高齢者の方をサポートしていけばよいのでしょうか?

なぜ自立支援が重要視されているのか?

大きな理由に「できるだけ高齢者の自立度を下げないため」というのがあります。
例えば、長年、家事をしてきた高齢の女性が、息子夫婦との同居をきっかけに、一切家事をしなくなり、それがきっかけで認知症になってしまった、という事があります。
家事は当たり前の事にようにやっている日常の風景ですが、これを効率良くやろうとすると結構、頭や体力を使うものなのです。

特に料理などは、時間配分や決められた時間内に手際良く済ませるために頭を使い、調理の際には手先を使います。家事をしなくなった事で、頭や体を使わなくなってしまうと、体や頭は衰えやすくなってしまうのです。
なので、「できる事はやってもらう」という事が、結果的に本人のためにもなるのです。

自立支援のためのサポートの仕方

自宅で家族と一緒に生活している高齢者の方の場合は、家事など自分でできる事は自分でやってもらうようにするのが理想です。
料理は時間がかかってもいいので一品だけでも作ってもらう、料理が無理なら簡単な掃除、掃除が無理なら、洗濯をたたんでもらう、などできる事はたくさんあります。
また、家事を手伝う事が難しい方の場合は、自分の身の回りの事を、できるだけやってもらうようにしましょう。

入浴の時には自分で体や顔を洗ってもらう、自分でお箸を持って食べてもらう、自分で着替えをしてもらうなどです。
体が不自由になってくると、何をするにも時間がかかってしまうので、つい手を出してしまうのですが、なるべく本人にやってもらうように心がけてみて下さい。

「何もしない場合」と、「自立支援をした場合」の介護度の進みかた

グループホームに入所する前、自宅で一人で暮らしていた80代の女性の場合を書いていきます。
普段はヘルパーや、自分の娘が家に来て。家事や自分の身の回りの事をしてくれていたので、自宅にいる時はほとんど何もしていない状態でした。

そのせいか、認知症がひどくなり、同じ事を何度もきく、昼夜が逆転する、などの症状が出るようになり、グループホームに入所する事になりました。
その方が入所したグループホームでは自立支援のために、利用者の方にも積極的に自分の身の回りの事や、家事にも参加してもらっていました。

職員が見守りながら、料理の盛り付けや、簡単な拭き掃除などもやってもらうようになると、以前のように同じ事を何度もきくという回数は減っていきました。
日中に頭と体を動かすようになったおかげで、夜もぐっすり眠るようになり、笑顔も増えて毎日穏やかに過ごせるようになりました。

久しぶりに会った家族の事もきちんと覚えていて、家族の方も喜んでいました。
何もしない毎日を送っていると、脳には何の刺激もありません。
そんな生活を長く続けていると、いろんな機能が衰えていってしまうのです。
その人が今できる事をやってもらう事で、衰えるスピードや、認知症の進行を遅らす事ができます。

実際の介護現場での自立支援は?

デイサービスやグループホームでも「自立支援」に重きをおいている施設も多くあります。
利用者の人が一緒に参加して料理を作ったり、入浴の際や、更衣の際も見守りだけで、できるだけ利用者の人に自分で更衣をしてもらう、など、職員は必要以上には手を出さないようにしている施設もあります。

しかし、基本はそうでも、実際はいつも実行するのは、なかなか難しい場合もあるようです。
利用者の方にやってもらうと、時間がかかってしまいますし、もう一度きちんとやり直すという手間もかかってしまいます。
少ない職員で、決められた時間内にやらなければいけない時は、つい職員も手をだしてしまいます。
料理や掃除や洗濯も、利用者の方にやってもらうより、職員が自分でやった方が、職員自身は楽なのです。そのため、職員によってはすべて自分でやってしまう人もいるようです。

まとめ

介護は「人のお世話をする」というのが本来の目的です。
しかし、「自立支援」に関しては、「あえて世話をしない」事が目的になります。
大事なのは「見守る」事です。利用者の方の作業の仕方を見る事で、何ができて、何ができないのかを見極める事ができると思います。

更衣の際、手が不自由な方の場合は、やはり介助がないと難しいですし、どうしてもできない事には手を貸す事も大事です。
その人のできる事はやってもらう、できない事は介護士がする、簡単な事のようですが、実は難しい事でもあります。
それが当たり前にできる介護士が「できる介護士」と言えるのではないでしょうか?

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