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介護士のお仕事

転倒事故予防のために、座りっぱなしにならない歩くことの重要性

ご利用者様の転倒事故は、ご利用者様の骨折などに直結する場合があることはもちろんですが、ご家族様への謝罪や説明、そしてその時勤務していた介護士にとってもよい思いは残りません。

介護士として「ご利用者様の転倒事故を減らしたい、無くしたい」と思うのはもちろんのことですが、対応策として「できればご利用者様に座っていてほしい」「不用意にご利用者様お1人で歩いてほしくない」と考える介護士の方は多いのではないでしょうか。そして座っていること、歩かないことが転倒事故防止に結びつくと考えているのではないでしょうか。

しかし、安易に座りっぱなしの時間が長くなる、歩かない時間が長くなるような生活は、結果的にご利用者様がより転倒しやすい状況を招く恐れがあります。今回の記事では、ご利用者様が座りっぱなしで、歩かない時間が長くなると、返って転倒の危険性が増す可能性とその理由について、触れていきます。

下肢筋力の低下防止が必要

介護士の勉強をしてきた方の多くが耳にしたことがある言葉の1つに「下肢筋力の低下防止」があるのではないでしょうか。

この「下肢筋力の低下防止」は、高齢のご利用者様と関わるうえでは1つのキーワードになります。もちろん難病のようなご病気の種類によっては、病気に起因する筋力低下があるので、全てのご利用者様に該当する言葉とは言えません。しかし、自然に年齢を重ねていく多くのご利用者様の転倒予防に対してこの「下肢筋力の低下防止」は重要になります。

「下肢筋力の低下防止」と「生活リハビリ」の関係

「下肢筋力の低下防止」という言葉だけ聞くと、なんだか難しい響きではありますが、高齢者介護において、下肢筋力の低下防止を難しく考える必要はありません。

下肢筋力の低下を防止するために、今の時代、一部の高齢者でも流行っているフィットネスクラブ、ジム、リハビリ特化型デイサービスなどを利用し、筋トレマシーンを使って下肢筋力の低下を防止している方もいらっしゃいます。

しかし、そこまでしなくても、下肢筋力の低下を防止する方法は、ご利用者様の生活の中でまかなうことが可能です。

冒頭に述べたことと関係してきますが「座りっぱなし」「歩かない」ではなく、生活の中で「適度に歩く時間を設ける」「生活の中で歩行時間を作る」だけでも立派な下肢筋力低下防止につながるのです。
介護士に大切な視点は、この「生活の中で、生活動作の一環として歩行時間を作る」という点です。
これが「生活リハビリ」という考え方にも結びついていきます。

「認知症は寝たきりにならない」と言われた時代について

認知症のご利用者様に対して失礼な表現で申し訳ないのですが、生活リハビリの考え方として参考になる話をご紹介します。

ひと昔前の介護業界では「認知症は寝たきりにならない」と表現されていた時代がありました。これは端的に言えば「認知症の方は様々な理由で歩く方が多い」(以前は徘徊(はいかい)という言葉が使われていました)ので「足腰(下肢筋力)が衰えにくい」ということの例えとして使われた言葉です。

もちろん認知症のご利用者様も生身の人間であるので、いつかは歩くことができなくなる日は来ます。
しかし、上記でご紹介した表現はまさしく「生活の中に歩行する時間がある」ということで下肢筋力低下防止になっている例えと言えます。

座りっぱなし、歩かないことの弊害について

「歩くから転倒する」から「座っていて歩かなければ転倒しない」と考える方は多いと思います。しかしこれは重大な転倒事故を招く恐れがあります。それと身体拘束と捉えられてしまう可能性があり高齢者介護においては非常に注意が必要です。

まず、ご利用者様が「座りっぱなしで歩かない」という状況がいつまでも続けていけるでしょうか?
介護士の目の届かない場面で、お1人で立ち上がったり、本来歩行介助が必要なご利用者様が気がついたらお1人で歩いていたという場面に遭遇したことはありませんか?

座りっぱなしで歩かない環境を作っても、ご利用者様自身が例えばトイレに行きたい、帰りたい(帰宅願望)、周りがザワザワしていて落ち着かない等々の理由で歩き出したくなる場面は日常的に発生します。そのときに普段歩く機会が少ないご利用者様は下肢に力が入らず、例えば立ち上がり時にバランスを崩して転倒されたり、2~3歩、歩きだしたものの力が入らず膝折れ転倒される可能性は高まります。これは生活の中で歩くことを奪われたご利用者様の弊害とも言えます。

また座っている時間が長いと、お尻の骨(仙骨)に褥瘡ができる可能性が高まります。座りっぱなしでお尻の出っ張った骨のところに圧力がかかってしまうからです。座っている時間が長いと、転倒以外に褥瘡発生の危険性が高まることも、介護士としては知っておかなくてはなりません。

まとめ

ご利用者様が座りっぱなし、歩かない時間が増えるとどういうことになるかを中心に触れてきましたが、いかがでしたでしょうか。
ご利用者様が座っているとなんだか安心のように思いますが、それは一時的であり長い目で見ると、座りっぱなしで歩かないからこそ、転倒やその他の危険性が増えると言えるのです。
今回触れた内容が、転倒防止で悩んでいる、転倒予防の為に何をしたらよいか悩んでいる介護士の方の参考になれば幸いです。

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