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看取り介護?102歳のこだわりは車いすの自走10メートルと黒あめ摂取

超高齢化社会が進行するのにともない、元気な100歳も増えました。
ご利用者様やご家族様のご苦労は各々あるかとは思いますが、長寿大国日本の象徴のようで本来よろこばしいことであります。

100歳を超えた方の生き様もそれぞれありますが、今回ご紹介するご利用者様は、私が今関わっている特別養護老人ホームで先日102歳を迎えられたご利用者様のお話です。

長生きの秘訣(?)というより、ご本人様のこだわりと、ご本人様にとっての毎日のちょっとした身体を使う動作が、ご本人様の毎日を支えているようにも感じています。
今回は、その102歳のご利用者様と介護士の関わりとしての体験談としてご紹介いたします。

100歳を超えてから2回の意識消失「もうダメかと・・・」

102歳で要介護4のK様は、要介護4とはいっても、車いすに座られると、とてもゆっくりではありますが自走することもできるくらいの元気さがあります。

そんなK様も、100歳の誕生日を超えて間もない頃、原因不明の意識消失を2回、短期間で発症という危機に陥ったときがありました。
関わりのある介護士はじめ他の職員も「K様は、もうダメかも」「将来はそう長くないかも」という空気感の中、ご家族様と医師を交えての話し合いを持ちました。

医師からは当然のように「100歳を超えて、たて続けに2回の意識消失発作、何があってもおかしくない年齢です」との見解、そして医師は「このような状況ですが、ご家族様は延命治療を希望しますか?」とご家族様に聞きました。

ご家族様は「希望しません」とのこと。医師「では看取り介護の対応をしましょう」ということで、K様の看取り介護が始まったはずでした。

それから2年、何事もなかったかのような生活を送っている

話は急に先に進みます。
100歳を超えて、意識消失を立て続けに2回繰り返したK様、そして医師は看取り宣告をして、誰がその2年後、K様の102歳の誕生日を迎えることが予想できたでしょうか。

でも不思議なことに、K様は100歳後の2回の意識消失の後は、何事もなかったかのように日々を送られているのです。

102歳なので他ご利用者様と同じような元気さはないものの、生活の中でこだわりを2つもって生活しており、それが毎日のK様のリズムになっているとも言えます。

こわだり1=食堂までの車いす自走片道10メートル

102歳のK様の生活上のこだわりの1つは、ご自分のお部屋から食堂までのわずか10メートルばかりの距離を、車いすで自走して向かうことです。

普通の成人から見たら、たかだか10メートルなのですが、102歳のK様の自走スピードは牛歩のごとくのようです。
それでも、経験の浅い介護士が「車いす押していきましょうか」と声をかけようものなら、K様は「自分でやる!」と張りのある声で返答されます。

K様の声が聞きとれなかった経験の浅い介護士が、車いすを押して食堂まで連れていってしまうと、その日の食後、K様は施設の生活相談員を呼んで「あの人(経験の浅い介護士)が車いすを押していってしまった、もうあの人には車いすを押してほしくない」と苦情(?)のように話をするのです。
(余談とは言い切れませんが、適切に苦情処理対応させていだだいたことも何度もありました。もちろんご家族様はご理解されているので、大事の苦情には至っておりません。)

ただ、K様のこの片道10メートルの車いす自走が、K様の生活リズムを生み、生活の中でのハリとなっており、手を使って車いすを自走するという点では生活リハビリも兼ねていると言えます。
結果的に、K様が長生きできていることの1つにつながっているように思えるのです。

こだわり2=砕いた黒あめがおやつとして楽しみになっている

102歳のK様のもう1つのこだわりは、昔から大好きな黒あめをおやつとして食べることです。

数年前まではK様は、この黒あめを市販の普通の大きさのまま食べていたのですが、2年前の100歳時の意識消失の後、誤嚥窒息防止のため、K様と長女様が話し合って(というか、長女様の説得により)黒あめを砕かせてもらうことにしました。

砕いた黒あめでも、K様は「無いよりはいい」と、昼食後から夕食までの間に黒あめを召し上がられるのです。
黒あめ1~2個ではたいしたカロリー摂取はできませんが、K様にとっては「今日も食べることができた」という精神的満足に結びついているように思います。

他者からみたら小さいこだわりも、大切な生き方になる

102歳のK様と関わりながら感じたことは「他人からみたら小さなこだわり、たいしたことのないこだわりであっても、ご本人にとっては生活維持(精神的なことも含め)のために大事である」ということです。

2年前の立て続けの意識消失がウソのように、毎日のちょっとしたこだわりを守り続け、生活を維持しているK様。
今はもちろん看取り期ではなく、施設内の最高齢者として、このまま元気でお過ごししていただきたいと誰もが思っているご利用者様なのです。

まとめ

100歳で2回の意識消失、医師から看取り宣告までされたK様でしたが、不思議なことにその後何事もなかったかのように102歳の誕生日を迎えられました。
人には不思議なことが多々おこりますが、102歳のK様から学べたことは「ご本人様の何気ないこだわりを大切にする」ということかなと感じました。

今回ご紹介した体験談が、介護士を目指す方、すでに介護士として働いている方の励みややりがいにつながれば幸いです。

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