高齢者の方・ご家族の方向けコラム
特養の個室タイプと多床室、それぞれのメリットとデメリット
- 2018.02.15 @ 新着
- 高齢者の方・ご家族の方向けコラム
介護施設の1つである「特別養護老人ホーム(以降、特養と表記します)」は、ここ数年の間に個室タイプの特養が増えてきました。
ご家族様の立場としては、料金はともかく「特養に入所できるなら、多床室(ご利用者様2~6人程度の相部屋)よりも、個室タイプの方が良いという印象」を持っていらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、特養経験のある介護士(私)の立場からは「個室タイプが必ずしも良いとは限らない」と言えます。
今回の記事では、特養における個室タイプと多床室、それぞれのメリット、デメリットについて特養経験のある介護士の目線から触れていきます。
個室タイプが良いか?相部屋が良いか?
ここ数年間で新設される特養は、ユニット型個室の特養が圧倒的に増えました。
開設前の内覧会などで見学させてもらうと、昔の施設というイメージとはとても思えない程、設備が整っていて良い意味でマンションのような、またはホテルのような印象を受ける施設もあります。
そのような新しくて個室タイプの特養を見学してしまうと、ご家族様の立場としては「入所させること自体がかわいそうだから、せめて環境の整った個室タイプに入所させてあげたい」と思われるのが、自然な感情かもしれません。
一方で、昭和時代や平成の初期に開設された特養に多い従来型多床室(ご利用者様2~6人程度の相部屋)は例えば「ご利用者様のプライバシーが守られていないのでは?」という誤解をされやすくなっています。
特養勤務経験のある介護士(私)の立場から、まず最初に解いておきたい誤解は「個室は良くて、従来型多床室は良くない」という印象です。
個室タイプの特養にもデメリットはあります。一方、従来型多床室の特養にもメリットはあります。
どうしても見た目は、個室タイプの方が整っていてご利用者様のプライバシーが守られているように思われがちですが、多床室でご利用者様のプライバシーが守られていないかというと、そうとも言えません。
個室タイプであっても多床室であっても、その特養の職員がどのような介護観をもってご利用者様と関わっているかが大切です。
個室タイプの弊害
ハード面において環境が整っているように思われ、プライバシーが確保されているような印象を受ける個室タイプの特養ですが、ご家族様にお伝えしておきたいこと1つに「個室タイプには弊害がある」という点があります。
これからご紹介する内容は、特養の介護士として働いていたときに、実際にあった経験談です。
個室タイプの場合、例えば居室内でご利用者様が転倒していた場合、発見が遅れた、実際に転倒した場面をリアルタイムで見ていないので、どのような状況で転倒したのかがハッキリわからないといったことがありました。
また個室タイプでは、意識レベルの低下したご利用者様の発見が遅れたということもありました。
なぜかというと、個室という囲まれた環境だからこそ、職員の目が行きとどかない場面や時間が多く存在するからです。
何らかの疾患をもった要介護状態のお年寄りが1人で個室にいる、その状況で何かあった場合を考えると、少し恐いと感じませんか?
従来型多床室に対する誤解
特養の「従来型多床室」と聞くと「相部屋」というイメージが先行しがちです。
しかも「ベッドとベッドの間隔があまりなく、ご利用者様のプライバシーが保護されていない」と誤解されているご家族様もいらっしゃるのではないでしょうか?
従来型多床室といっても、船の2等客船室や雑魚寝(例えが悪くて申し訳ないです)とは違います。
従来型多床室といっても、ご利用者様のプライバシーは確保されています。
従来型多床室の中でも古い施設はカーテンでお1人様のスペースを仕切っている施設もありますが、比較的築年数の新しい施設では、1面または2面を適度な高さのつい立てでスペースをきちんと仕切って、ご利用者様のプライバシー確保に努めている施設もあります。
またご利用者様1人あたりの占有面積はそれなりのスペースが確保されており、
多くの従来型多床室の特養では、食べ物や危険物以外の私物は、ご本人様のスペースに置いてもかまわないことになっています。
従来型多床室のメリット
従来型多床室には個室タイプにはないメリットがあります。
これも特養の介護士として働いていた時代に実際にあった体験談ですが、あるご利用者様のベッド転落を同じ部屋の他のご利用者様が呼び出しボタンで教えてくれたということがありました(介護士としては恥ずかしい話ではありますが)。
このような、他のご利用者様があるご利用者様の異常を教えてくださるというのは、個室タイプではあり得ない話です。
また介護士の立場から言えば、個室に比べて死角が少なく見守りがしやすいので、ご利用者様の異常時発見も個室タイプに比べるとはやく発見できると言うことができます。
まとめ
いかがでしたか?
最近増えてきている個室タイプの特養と、以前から存在する従来型多床室の特養についてのメリット、デメリットについてご紹介しました。一概にどちらが良い悪いとは言えませんが「個室が良くて多床室が良くない」という誤解が解ければ幸いです。
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