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介護士コラム~体験談~

看取り期の外出!最後の希望をかなえてあげたい熱い介護士体験談

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入所施設での看取り期におけるご利用者様の多くは「ベッド上での生活が基本となり、排泄介助も食事介助もベッド上中心」になっていきます。
また直接関わる介護士も、ベッド上での介護があたり前となり、できるだけ無理をしないというのが看取り期におけるご利用者様への介護の考え方の主となります。

しかし、今回ご紹介する介護士体験談は、看取り期のご利用者様の外出を実現させたという体験談です。
それは、ご利用者様の声に耳を傾けた介護士が「ご利用者様の最後の希望になるかも・・・」という思いから、実現させた体験談です。
(この記事を読んだ介護士の方々の心が熱くなれば幸いです。)

町工場の社長だったH様

私の働いていた入所施設にH様という男性のご利用者様がいらっしゃいました。

H様は若い頃、自分で町工場を立ち上げ経営、小さいながらも(といっては失礼ですが)会社の社長をされていました。

脳梗塞がきっかけで半身麻痺となり要介護状態とはなったものの、入所した頃のH様は健側を上手に使って車いすを自走することができる程で、身のまわりのことはある程度ご自分でできるくらい自立度が高いご利用者様でした。

またH様は頭がクリアーで、コミュニケーション良好でした。

頭がクリアーだからこそ、希望をしっかり語るH様

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そんなH様も加齢とともに、状態低下が見られるようになりました。
自走できていた車いす移動も介助が必要になり、便座に移乗しトイレでできていた排泄が難しくなり、ベッド上でのオムツ交換へと状態は変化していきました。

しかし頭がクリアーであることに変わりはありませんでした。

頭がクリアーなH様だったからこそ、ご自身でご自分の状態がわかるのか「情けない身体が、よけい情けなくなった」と弱気な発言も増えてきました。
と同時に「死ぬまでに、もう1度自分が作った工場を見に行きたい」と希望もハッキリ語られることも増えました。

余談ではありますが、H様のご家族様は面会にはよくいらっしゃいました。
しかし、脳梗塞で半身麻痺、施設内では介護士の軽介助があれば、ある程度自立度の高い生活を送ることができていたH様ではありましたが、ご家族様が自宅に連れて行くこと(外出や外泊など)は、ご家族様にとっては難しかったようです(だから、施設に入所したとも言えます)。

ベッド上で過ごしても、いつかやってくる最期

人間誰もが歳を重ね、いつかあの世へ旅立つように、H様の状態は月日とともに緩やかに低下していきました。
食事の経口摂取が難しくなり、ゼリーやトロミ付きの水分摂取が増えていきました。

そして医師からは「加齢にともなう状態低下で看取り期です」という説明が、ご家族様と介護士含めた職員にありました(H様はもちろんこの説明は聞いておりません)。

ご家族様の面会が今まで以上に増えたこともあってか、頭がクリアーなH様はその雰囲気を悟ったようでした。
「死ぬまでに、自分が作った会社を、工場をもう1度見たい」とおっしゃる回数が増えました。

もちろん、普通に考えれば外出など不可能です。
お元気だった頃(介護士の軽介助で自立度の高い生活をされていた頃)でさえ、ご家族様による外出は状態的に難しかったのに、看取り期に入り基本ベッド上での生活となったH様が、普通に考えれば外出などできるはずもないのです。

しかし、介護士の中では、H様の「死ぬまでに、会社と工場を見たい」という希望を聞くと、なんとかその希望をかなえてあげたいと思う介護士が増えていきました。

医師の許可を得て、看護師同行で外出

看取り期のH様の状態は、さらに低下していきます。
水分摂取量も徐々に減っていきます。
しかし頭がクリアーなH様は「自分が作った会社、工場をもう1度見たい」とずっとおっしゃっているのです。

H様の希望をかなえてあげたいという介護士が増えていく中で、介護主任がある日こう言いました。
「ベッド上で過ごしていても、いつか最期はやってくる。だったらH様の希望をかなえる方法を考えよう。」

介護士の総意として介護主任はケアマネージャーに相談し、ケアマネージャーがご家族様と多職種を交えた会議(いわゆるサービス担当者会議)を開催し、次のような方向性となりました(なおケアマネージャーは、事前に医師の見解も聞いていました)。

「ご家族様、介護士、看護師が同伴で、施設の車両でH様の作った会社、工場を見に行く。」
「医師はこれを許可する。」
「(ご家族様は)道中、H様に特変が起きても、施設に責任は問わない。」(こう表現するとキツく感じる方はいらっしゃるかもしれませんが、実際はもっと柔らかい雰囲気でご家族様もご納得の上、書面に記名捺印をして同意を得ることができました。)

H様をストレッチャーに移乗して、H様の希望をかなえる往復1時間のドライブを実行することができました。
道中、何事もなく戻ってくることができました。

なお、会社と工場を見たときのH様とご家族様は、感極まって泣かれておりました。
同行した介護士もおもわずもらい泣きをしてしまいました。

穏やかな最期の顔

H様の希望がかなった翌日の朝、H様はご逝去されました。
人生やり残したことのないような穏やかな顔をされておりました。
介護士にとっても施設での看取り介護をやりきった感のある充実した看取りだったように感じました。

介護士が、看取り期のご利用者様の希望をかなえる体験談をご紹介しました。
今回の記事を読んでくださった方の多くが「介護っていいな」と思ってくだされば幸いです。

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