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介護士のお仕事

パンやカステラに潜む誤嚥・窒息のリスク。柔らかいけど油断禁物。

ご利用者様が誤嚥しやすい食べ物の中に、パンやカステラなどスポンジ状のものがあるのをご存じですか?
パン、カステラ、スポンジケーキなどは柔らかく、食べやすいイメージがあります。
また、食欲がわかないご利用者様への代替食品として用いられることが多い食材でもあります。

しかし、高齢者介護におけるパンやカステラのようなスポンジ状の食材に潜むリスクを理解しておかないと、気がついたときには誤嚥や窒息で生命の危機にさらされてしまう場合もあります。

今回は、パンやカステラのような、スポンジ状の食べ物に潜む誤嚥や窒息のリスクについてご紹介します。

パン、カステラ、ケーキは食べやすいイメージが先行する

介護系の資格を有している方であれば、座学や筆記試験勉強で、高齢者が誤嚥しやすい代表的な食べ物を学んできます。
その中に「パン」「カステラ」「スポンジケーキ」などが含まれています。

しかし、いざ介護現場で働きだすと、食欲がないご利用者様や通常メニューでは食がすすまず、食事摂取量がアップしないご利用者様のために、介護士や管理栄養士などの間で「パンを提供してみてはどうだろうか?」「甘いものが好きだから、カステラやケーキを用意したらどうだろうか?」という話題は日常的に発生します。

その結果、資格を取るために誤嚥しやすい食べ物を学んだ介護士も、いつしかパンやカステラのようなスポンジ状の食べ物は、誤嚥しやすい食べ物ではなく、高齢者が食べやすい食べ物というイメージを持つようになります。

介護士に限らず、一般的にもパンやカステラなどのスポンジ状の食べ物は「柔らかい」というイメージが先行するということも影響しています。

水分を含んだリスクと、パサパサというリスクの2面性

簡単に言うと、スポンジ状の食べ物には、水分を含んだときに生じる誤嚥・窒息のリスクと相反して、食材としてパサパサして口腔内でまとまらないときの誤嚥しやすいリスクの2面性を併せもっています。

なぜそうなるのか、詳しく説明していきます。

水分を含む危険

一旦、食材とは違う例で説明します。例えば、食器などを洗うスポンジを思い描いてください。実際にスポンジを手にとってみてもかまいません。

水分を含んでいないスポンジは、軽くてフワフワしています。
しかし、洗い物などで水分を含んだスポンジは乾いた状態より重くなり、水分によって塊のように感じることもあります。

食材に戻ると、パンやカステラなどのスポンジ状の食材はこれと全く同じ原理なのです。乾いているとき(通常の状態)は、軽くて柔らかいので、食べやすい食材というイメージになりがちです。

しかし、食べ物と一緒に飲むお茶やスープになどによってパンやカステラが水分を含んだり、口腔内で唾液と混ぜ合わさると、スポンジ状の食材は粘性の高い、重たい食べ物に変化します。
水分を含んでいるため、空気の通り道もなくなってしまいます。

この水分を含んで粘性の高くなったスポンジ状の食材が、高齢者の喉につっかえると、まさしく誤嚥や窒息のリスクとなるのです。

介護士は、スポンジ状の食材は水分を含むと危険な状態になるということを認識して、食事介助や見守りを行う必要があるのです。

パサパサでまとまらない

それでは、水分を含まなければスポンジ状の食べ物は安全なのかというと、これも実は違います。
水分を含んだリスクと相反するかのように、水分をほとんど含まない状態のスポンジ状の食べ物は、唾液分泌が少なくなっている高齢者の口腔内では、パサパサして、まとまらない食材になります。

高齢者に限らず、人間が口腔内に入った食べ物を飲み込む際は、大きすぎても誤嚥・窒息のリスクがありますが、適度な大きさの塊を形成しないと飲み込みにくいという状態になっています。

例えは悪いですが、水分を含んでいないスポンジを、細かくして、水道管などに水を使わずに流そうとしても流れていかないのと同じイメージです。

したがって、パンやカステラなどのスポンジ状の食べ物は、全く水分を含んでいない状態ではパサパサして、適度な塊を形成できないので、器官などに入りやすくなり、むせる等の誤嚥のリスクが生じるのです。

まとめ

スポンジ状の食べ物に潜む誤嚥・窒息のリスクをご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?

意外だと感じた方は、あらためて高齢者が誤嚥・窒息しやすい食材を再確認していただくことをおすすめするとともに、ご利用者様の食事摂取量アップのためにパンやカステラなどを用いたい場合は、誤嚥・窒息のリスクも考えながら、食事提供、食事介助、見守りをするようにしてください。

施設系で働く介護士の方は、ご利用者様の食事摂取量アップのためにスポンジ状の食材を用いたい場合は、管理栄養士はもちろんのこと、看護師などの医療職にも相談して対応を検討してください。

今回ご紹介した内容が、介護士の仕事である食事介助の応用として、介護の仕事をしている方々の参考になれば幸いです。

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