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介護士のお仕事

特養に新入居してきた方が早く慣れるための支援とは?

特養は、介護度の高いお年寄りが住まいとして暮らす介護施設です。
そのため特養の入居者というのは、何らかの身体的な障害や重度の認知症によって、常に介護を必要としています。

疾患や認知症をこれ以上進行させないためにも、生活の場として精神的に豊かに暮らしてもらうためにも、新しい環境でのストレスはできるだけ軽減して差し上げたいですし、スムーズにこちらの介助を受け入れてもらうためにも、慣れてもらうことは大切です。

しかし、環境への慣れというものは個人の力による部分が大きく、変化への対応が早い方、時間をかけて慣れていく方、個室に引きこもってしまう方など様々でしょう。
では、介護職に何かできることは無いのでしょうか。

「慣れさせる」は時間がかかる

そもそも「慣れるかどうか」は介護職が決める事ではありません。
しかし慣れたくなくても、どのような形であれ慣れていくのが人間です。
というわけで、介護職が心配しなくても、その人なりに慣れていきます。

むしろ、介護職が「私の力量であなたを慣れさせてあげます」と意気込んで、人それぞれのペースを狂わせてしまえば、介護拒否にもつながるでしょうし、いつまでたっても「やらされている感」「やられている感」が残ります。
自然に接し、ご自身のペースで生活してもらうのが、一番無理がなく、良い形で慣れていただけます。

自然に接するとは何なのか

ここで言う「自然に接する」とは、人として信用してもらうということです。
残念なことに、お年寄りに対して適切な言葉遣いや態度を取れない職員がいますが、こういう人がいると、慣れてもらうことを遅らせる原因になります。

例えば、普段から子供を叱るかのような態度を取ってしまう職員がいて、入居して早々にそれを目の当たりにしたら「ここは嫌なところ」と思われてしまいます。
この職員が直接新しい入居者に同じ態度を取ってしまえば「そしてこの人はもっと嫌」となるでしょう。
「嫌」という気持ちになってしまうと、受け入れてもらうのは難しくなります。このまま慣れていけば、職員から見て「介護拒否があり乱暴な入居者」になってしまう可能性すら否めません。

自然に接するというのは、ありのままの現状を受け入れてもらうということではなく、まず介護職側が人として普通に接し、入居者に「ここは自分には害がなく、自分に善いようにしてくれる人が何人かいる」と感じてもらうことです。

楽に介護したかったら介護者側が譲る

例えば、施設の朝食時間が7時で、新入居者は8時に朝食を取る習慣があったとしても、施設では7時に食べてもらうことになりますよね。
しかし、今すぐ今日から7時に食べてもらうことは、入居者にとってストレスです。「実は8時でなくても良いの」と自ら7時に食べてくれる方もいますが、そうでない場合は8時に配膳しましょう。

上の項目で述べた通り「嫌」と思われてしまうと、ストレスをためて体調を悪化させることや、介護拒否・暴力などの悪い方に慣れてしまうこともあるからです。
こうなると入居者本人も嬉しくありませんし、介護職も余計に忙しくなります。

一度8時に出してしまったら今後ずっと8時が定着してしまうのでは…?と心配する必要はありません。
信頼関係ができてくれば、例え「業務のためにもう少し早く配膳したい」とストレートすぎる相談をしても「君が困っているなら協力してやろうじゃないか」と快く合わせてくれます。
信頼関係なく「朝食は7時」と無理強いするのと比較すると、ストレスも労力も少なく自然ですし、「良い匂いがしたから来たよ」と自ら7時に食べてくれたらラッキーです。

重度の認知症の方は特に丁寧に

認知症の方は、その場や人の空気を一瞬で読み取ります。
その一瞬の判断がどうであれ、その人にとって印象が悪いと、上で述べた「嫌」と言う気持ちが先行します。
介護を受け入れてほしければ、信用できると感じ取ってもらうことが一番大切です。
また、その時一瞬の信用を得ても、次の時には忘れてしまっていることが多いので、「ある程度の信用が築けた」と気を抜いて失礼な態度を取ると、もう受け入れてもらえません。
認知症だからこそ、礼儀をわきまえた人として自然なコミュニケーションが大切です。

まとめ

認知症があろうがなかろうが、何もしなくてもその人なりに慣れていきます。
より入居者本人が精神的に豊かで、介護職も楽な介護ができるような慣れ方をしてもらうためには、「慣れさせる」のではなくて「慣れるのを待つ」方が無理なくストレスなく、しかも早いです。

わざわざ苦労して時間をかけて、嫌々環境に合わせさせ、体調を悪化させることや介護拒否を生み出す必要は、全くありません。
施設に合わせてほしければ、まずは人としての信頼関係を築き、介護職から入居者のルールに合わせます。「あんたが言うならそうしてあげるよ」と思ってもらえるだけの人間関係ができれば、お互いストレスなく、より良い慣れ方をしていただくことができます。

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