介護職はなぜ低賃金なのか？

同じ年代でも、他の職業に比べると、100万以上も年収が低いと言われる介護職。
以前から、人材を確保しようと、介護職の賃金を上げるように国も政策を考えていますが、思うように給料はあがりません。
なぜ、介護職は低賃金のままなのでしょうか？

介護職の低賃金は介護保険制度が始まったのがきっかけ。

30年ほど前にヘルパーの仕事をしていた人は「昔の介護職は今の倍くらい給料があった」と言います。その時代の景気も関係しているでしょうが、今のような賃金の低さになったのには、2000年から始まった介護保険制度がきっかけです。

それまでは、介護が必要になった高齢者は病院で介護をされていました。
しかし、高齢化が進み、国が医療費を負担しきれなくなってきたため、「医療」と「介護」を二つに切り分け、介護の方には今までのようにお金をかけないようにするシステムになったのです。
介護保険制度が始まり、事業者が利用者に介護サービスを提供した場合は、国が事業者にサービス費用を支払うという、介護報酬のシステムが加わりました。
介護報酬は、事業所のサービス提供の種類や、利用者の数によっても違ってきます。

施設経営は、この介護報酬で成り立っているため、限られた介護報酬の中で支払われる職員の給料も低賃金になってしまうのです。

同じ介護職でも、施設によって給料に大きな差がある。

毎月、25万の給料が出る施設もあれば、12万の施設もあります。
同じ介護職なのになぜこんなにも給料の差があるのでしょうか？
それは施設の規模や、利用者の数が大きく関係していると言えます。

入所型の施設で、長い間部屋に空きがある、デイサービスなどの通所施設で利用者の数が少ない、そんな場合でも、施設の維持費や人件費はかかるため、利用者がいない分、赤字になってしまいます。
最近は入所型の施設はどこも満室になっている事が多いですが、部屋があっても、働く職員が足りないため、入所させる事ができない、という施設もあります。

空き部屋の維持費がかかるため、職員の給料は少なくなり、さらに人が集まらないという悪循環になっているのです。
常に満室で、利用者の多い事業所の場合は、職員の給料も安定している傾向にありますが、中には黒字経営であっても職員の給料には反映されていない所もあります。
施設の増設や修繕費などに費用が当てられ、現場の職員には還元されないのです。
職員の待遇は事業所の経営者によって大きく違ってきます。

処遇改善手当てで、給料は上がったのか

日に日に、介護職の人材不足は深刻になってきています。
何とか、介護職の賃金を上げて、人材を確保しようと、平成24年から、処遇改善手当てを支給している事業所もあります。

処遇改善手当ては、事業所が、利用者に「介護職員処遇改善加算」として介護サービスと一緒に請求し、利用者から支払われたものが、職員に支払われているのです。
この制度のおかげで、職員の毎月の給料は10000～15000円ほど上がりました。

事業所によっては一年に一度、賞与としてまとめて支給している所もあります。
しかし、「介護職員処遇改善加算」という制度は、この先もずっとあるものではなく、当初は平成27年度まで、という期限付きで始まったものです。
平成27年の見直しでも、このまま「とりあえずは継続させる」という形で続いていますが、この先はいつまで存在する制度なのかは、はっきりしていません。

事業所としては、この「介護職員処遇改善加算」を行う事で、給料を上げる事ができ職員の雇用促進に繋がるというメリットがありますが、請求手続に手間がかかったりするので、実施していない施設もあります。
そのため、職員の賃金を上げるという根本的な解決にはなっていないようです。

これから賃金が上がる事は期待できるのか？

処遇改善手当てが、平成27年度から、2倍に増えたという施設もありますが、その他に介護報酬が減額され、人件費がかからないよう、職員が少ないままで運営している施設もあります。
企業のその時の経営状態で、賞与が増える事はあると思いますが、毎月の給料を上げるというのは、今の介護制度では難しいというのが、実情のようです。

また、施設によっては、人材不足を解消するために、外国人を積極的に雇用している所も増えてきました。日本人の従業員の給料を上げて人材を確保しようとしている企業が残念ながら少ないようです。
介護制度のしくみが根本的に変わっていかないと、介護職員の給料は現状のままで続いていくと思われます。

まとめ

慢性的な職員不足になっている施設では、「職員が辞めても、また他の人を雇えばいい」と、長期的な雇用には消極的なところもあります。
会社に大事にされない職員は当然職場を変える事を考えます。

今はどの施設も人手が足りないと言われていますが、頻繁に職員が辞めてしまう施設は、給料が安いほかにも何か原因がある事が多いです。